伝統の縁起物
KARAKO展
伝統工芸士 原 松子
伊万里・有田焼
私たちが原松子さんと出会ったのは、2020年ころ。
ある日、展示会のご相談で唐子絵の飯椀を見せていただいた時、
あまりの愛らしさに魅了されると共に、
懐かしいあのころの思い出が呼び起こされました。


なぜ今、唐子 “KARAKO”?
お団子髪の伝統絵柄
唐子ちゃんたちは、どこへ…


皆さんは、唐子(からこ)絵をご存知ですか?
名前を知らなくても、こんなお団子髪の子どもの絵柄の器を見たことがあるのではないでしょうか。かつて(私が子どもだった昭和の頃)、唐子絵の器は日常の食卓で、また旅館や会社で、暮らしの一部として広く愛されていました。
それから数十年が経ち、原さんの唐子絵の作品を目にしたとき、気づいたのです。「あの唐子ちゃんたちを見なくなった。」ということに。
原さんに伺うと、「唐子を描く作家が減っている」とのこと。そして唐子絵の歴史や由来、原さんの想いを知り、「今こそ、原さんの唐子作品を知ってほしい!」と願い、てのひら美術館での「KARAKO展」開催に至りました。

江戸時代より
永く親しまれてきた唐子絵は
縁起のよい図柄。
唐子絵(からこえ)は、中国風の髪型や服装の可愛らしい子どもたちが、コマや凧揚げをして遊んでいる姿や、学問に励む様子がよく描かれます。中国では、たくさんの子どもが集まる絵柄から、子孫繁栄、家庭円満、豊作祈願などの象徴とされ、春節に飾られる厄除けの版画「年画」にも描かれます。 江戸時代、その縁起は日本に伝わり、唐子は吉祥文様のひとつとして広まりました。世界有数の陶磁器産地、中国の景徳鎮(けいとくちん)などで作られた青花(染付)陶磁器が日本に輸入され、 異国情緒の象徴として唐子のモチーフが広まり、伊万里・有田焼や京焼などの絵付けに取り入れられました。 そこからさらに、茶器や屏風絵、着物の柄にも、唐子が描かれるようになり、広く愛される意匠となったのです。

中国史好きの原さん
唐子絵に隠された想いとは?
中国の歴史が大好きな原さん。中でも乾隆帝(けんりゅうてい)の時代がお好きで、中国まで書籍や陶磁器を求めに訪れたこともあるほど。そんな原さんが描く唐子絵は、アクティブな人柄を表わしているような、元気いっぱいの姿で優しい笑顔が魅力です。
絵付けに黄色が印象的に使われるのは、皇帝だけが身に付けることが許された色であったことにちなんでいるのだそうです。
また、最高級の皇帝御用酒盃とされるチキンカップをイメージして、鶏の代わりに唐子を描いた作品もあります。
唐子が生まれた国、その古の皇帝に思いを馳せ、日本の伝統工芸に映し出される原さんの唐子絵、その思いを知り、魅力が一層深まりました。



透き通るような白磁と
繊細かつ華やかな絵付けが
最大の特徴の伊万里・有田焼。



伊万里焼・有田焼の起源は江戸時代の1616年(元和2年)に遡ります。鍋島直茂により朝鮮から渡ってきた李参平によって、有田泉山に磁器原料の陶石を発見されたのが有田焼の始まりとされています。伊万里・有田焼と呼ばれるのは有田で焼かれた磁器が、伊万里港から出荷されたためです。伊万里・有田焼は、キメが細かくなめらかな手触り、透き通るような白磁と、その上に施される繊細かつ華やかな絵付けが最大の特徴で、耐久性が高く、美術品から日用品まで幅広く作られています。主要な様式には、余白を活かした「柿右衛門様式」や、緻密な構成の「鍋島様式」などがあり、海外でも高く評価されてきました。

釉下彩唐子牡丹遊戯図コップ
無数のテストピースで研究を続ける
原さんだけの色使いにも注目
有田での修業時代、原さんが自分だけの作品を追求する中で、たどり着いたのが“色へのこだわり”。絵の具店を隅々まで巡り、数えきれないほどのテストピースを作成し、自分だけの色を、今でも追い求めています。鮮やかな黄色、細かな濃淡や繊細な色調の変化で表現された青や緑、原さんの釉下彩作品では、その色への深い想いを感じることができます。
「作品をどう作るのかを考えることが、とても楽しい」そう笑顔で語る、原さんの器でいただくお料理は、また格別なものです。
Profile
伝統工芸士 原 松子
【職歴】
▫️昭和46年/八王子市夢想庵陶芸教室 手伝い
(寒河江善秋氏主宰)
▫️昭和47年/帰郷後 唐津焼窯元一仙窯 手伝い
(父自営)
▫️昭和54年/佐賀県窯業試験場 下絵付研修
▫️昭和55年/佐賀県窯業試験場 デザイン研修
陶祥窯勤務
▫️昭和59年/佐賀県窯業試験場 デザイン研修
有田町原重製陶所 勤務
▫️平成6年/魯山製陶所勤務(伊万里市)
▫️平成7年/小笠原藤右衛門窯勤務
(伊万里市大川内山)
▫️令和3年/佐賀県陶磁器工業協同組合
上絵付研修講師
▫️令和4年/佐賀県陶磁器工業協同組合
上絵付研修講師
【免許】
▫️平成17年/伝統工芸士認定(下絵付加飾部門)
▫️平成18年/一級技能士認定(絵付部門)
▫️平成19年/職業訓練指導員免許取得
(陶磁器製造)
▫️平成23年/伝統工芸士認定(上絵付加飾部門)
▫️平成27年/ものつくりマイスター認定
(陶磁器製造)
【賞歴】
▫️昭和62年、平成元年、3、4年/
ながさき陶磁展入選
▫️昭和62、63年、平成元年、2年/
日本新工芸展入選
▫️昭和62、63年、平成2、3年/
西部工芸展入選
▫️平成元年/九州山口陶磁展産業部門
NHK佐賀放送局長賞入賞
▫️平成20年/日本伝統工芸士会作品展入賞

釉下彩(ゆうかさい)が、多彩で微妙なグラデーションのやわらかい表現を可能に
釉下彩(ゆうかさい)とは、素地に直接絵付けをし、その上から透明な釉薬(ゆうやく)をかけて焼き上げる技法です。この技法により、絵柄が釉薬の下に閉じ込められ、ガラスのような光沢と深みのある発色が特徴です。 原さんの青色の唐子絵は、ポイントに色が入り上品でかわいらしい表情の器になりました。
釉下彩唐子遊戯図木瓜形小鉢
「木瓜形」。
伝統のかたちで魅せるおいしさの演出
木瓜形(もっこうがた)とは、鳥の巣や、瓜(バラ科の木瓜)の切り口をかたどった形のことです。平安時代に「木瓜(もっこう)」と呼ばれるようになった御簾の帽額(もこう)に由来する家紋として有名で、子孫繁栄の象徴ともされます。和食器の世界でも非常に人気のある伝統的な形状の一つで、鉢や向付などでよく見られます。食卓に柔らかな雰囲気と格調高さを添えます。

ぼたんの花の中で遊ぶ唐子たちの幸福な表情
牡丹の絵柄は、「富貴と繁栄・幸福と良い前兆・不老長寿・高貴さと美しさ」を象徴する吉祥文様。これは、中国や日本において「百花の王」や「百花の長」と称されたことに由来し、 贈り物や特別な調度品として古くから重宝されています。さらに原さんの手による唐子と組み合わせられ、吉兆の意味が深まっています。


側面図柄
















